コラム .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK/WHITEインタビュー サイバーコネクトツー松山洋氏とファンの夢が実現

バンダイコレクターズ事業部より発売されるフィギュア「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK」と、「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE」は、2006年に発売されたプレイステーション2用RPG『.hack//G.U.』3部作の主人公ハセヲをモチーフとしたフィギュアである。
今回は『.hack//G.U.』の開発元であるサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏にフィギュアへの想いを語ってもらった。


 10年の時を経て、ハセヲがフィギュア化される。ファンと、松山氏をはじめとしたサイバーコネクトツーのスタッフが夢見た“フィギュア”の実現は、バンダイコレクターズ事業部デピュティゼネラルマネージャーの原田真史氏の尽力があったという。この2人の思いを本商品の開発担当であるコレクターズ事業部の林佳奈子氏はどう実現させたのか?
 インタビューでその秘密に迫ってみたい。

 

ハセヲをフィギュア化するのが10年来の夢だったと語るサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏

バンダイコレクターズ事業部デピュティゼネラルマネージャーの原田真史氏。10年前『.hack//シリーズ』の2代目プロデューサーを務めた人物。今回再びタッグを組んでフィギュア化を実現した

■10年の時を経て復活したタッグによる“夢の実現”

――最初に「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK/WHITE」の商品化の経緯を教えてください。

松山氏:まずはなぜこのフィギュアが今発売されるのか、そこから説明させてください。11月1日に、かつてPS2で発売されていた『.hack//G.U.』3部作が、PS4向けのHDリマスター版となって『.hack//G.U. Last Recode』として発売されます。フィギュアは10年前からのファンの方にはもちろん、『.hack//G.U. Last Recode』でファンになった方にも注文できるスケジュールになっています。

――なるほど、今回のフィギュアはゲームの発売に合わせてのものなんですね。

松山氏:それだけじゃありません。実は原田さんは10年前、バンダイ(現:バンダイナムコエンターテインメント)で『.hack//シリーズ』の2代目プロデューサーを務めた方なんです。『.hack//G.U.』で私達は色々なことをやった。

原田氏:大変でした(笑)。

松山氏:その原田さんが、今はコレクターズ事業部にいる。コレクターズ事業部はハイクオリティなフィギュアを製作するノウハウを持っていて、以前の「魂ネイション」でハセヲのフィギュアの試作品を出しているのも私は見ていた。だから「たのもう!」って言ってコレクターズ事業部に来たんです。原田さんを訪ねて。

原田氏:全ては松山さんがうち(バンダイ)に来たとき、決まったと言えますね。10年前の『.hack//G.U.』を作ったあの熱が、再び動き出したことを感じました。

松山氏:今回のフィギュアはゲームを出したのと同じコンビで、ゲームと同じように私達がやりたいことを原田さんに実現してもらった。「ゲームが出たからフィギュアもよろしくね」じゃダメなんです。お互いに夢を見たかった。
 ゲームとフィギュアはそれぞれが独立しているんじゃなくて、同じプロジェクトとして原田さんと進めたかった。だからこそ、ただのフィギュアじゃダメなんです。このフィギュアを買うことで『.hack//G.U.』の謎が1つとける、そういうフィギュアにしたいんです。
「あの『.hack//G.U.』の続きを、10年前の続きをしようじゃないか」そういう気持ちでやっています。

原田氏:フィギュアを入手することで「.hack」シリーズをもっと好きになってもらいたい。ファンアイテムであることはもちろん、このフィギュアでゲームに興味を持ってもらえる様な、そういうフィギュアを目指して作りました。

【フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK】

ゲームの最初に登場する「黒いハセヲ」の姿。「彼は一体何者なんだ?」とグッと引き込まれるその姿を立体化している。彼はここからもがき苦しみながら物語を引っ張っていく

【フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE】

ゲームの最終章であるVol.3に登場する「白いハセヲ」の姿。ゲーム内では武器を持っていないが、色設定などを新規に行なっている。ゲームをプレイした人にこそ意味がわかるフィギュアである

■最高のフィギュアに! サイバーコネクトツーの溢れる情熱

――ハセヲというキャラクターと、今回のモチーフはどういった理由で選ばれたのでしょうか。

松山氏:まず、「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK」は、『.hack//G.U.』でハセヲがプレーヤーの前に現われる“最初の姿”です。彼はPK(プレーヤーを殺すプレーヤー、プレーヤー・キラー)を狩るPKKとしてゲームの最初にその姿を見せます。

 『.hack//G.U.』のハセヲは、いわゆる“劇場型”の主人公といえます。プレーヤーはハセヲの“復讐”のドラマ、そして彼がむき出しにする感情を追いかけていく。何故彼はこんな感情を持ってしまったんだろう、どうしてこんな姿になってしまったんだろう、そういう疑問がプレーヤーを引きつける。

 そしてハセヲが間違い続けながら成長していく中で、プレーヤーは「ハセヲの物語」により一層引き込まれていくんです。黒いハセヲの姿は、最初の印象と共に、ゲームの中で彼がどのように変わっていったかに思いを馳せるアイテムとなります。

 「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE」は、Vol.3でハセヲの“内面”として現われる姿を再現したものです。このキャラクターの意味はゲームをやりこまないとわかりませんが、逆にプレーヤーにとっては大きな意味を持つ姿です。3rdフォームで黒と白が対になっているところもポイントです。ゲーム内の白いハセヲは武器を持っていませんでしたが、今回のフィギュア用に新たに設定しました。

――フィギュア化にあたり、松山氏から「ここはこうして欲しい」といった要望はありましたか?

松山氏:それはものすごく(笑)。ファンはもちろんですが、私も含めて、自社のキャラクターがハイクオリティのフィギュアになるというのはサイバーコネクトツーの夢だったので……。サイバーコネクトツー社内全体で、当時『.hack//G.U.』を手がけたスタッフはもちろん、10年前は高校生で『.hack//G.U.』が大好きだったというスタッフから、ファン目線での意見も盛り込みました。
 特にグラフィックス/モデリング関連のスタッフはフィギュアも大好きなものでものすごい量の要望が出ました。私がそれをまとめたのですが、フィギュア製作の方はプロなので、失礼にあたるかなとも思いましたが、そこはうまく原田さん、林さんよろしくねと(笑)。

【サイバーコネクトツーからの要望】

非常に細かく想いを込めたサイバーコネクトツーからの「修正のお願い」。加工した写真を使ったり、他のフィギュアの写真を例に出すことも……。その細かすぎるこだわりは、「フィギュア化が本当にうれしい」という想いが伝わってくる。

――すごく細かく、熱の入った要望ですね。林さんはこれを受けてどのように進めていきましたか?

本商品の開発担当であるコレクターズ事業部の林佳奈子氏

林氏:具体的にイメージをいただけたので、すごくありがたかったですよ。ここまで細かいからこそこっちもがんばらないとと(笑)。もちろん私達の「フィギュア作成のノウハウ」を活かした部分も多いです。アーマーの立体感や、ハセヲの筋肉の感じ、腹筋など生身の肉体を感じさせる部分と、硬質な甲冑の質感といった、素材によるコントラストを造型と塗り分けで表現しています。  ハセヲはやはりその“中二感”というか、ダークで、イメージ的にも突っ走っている雰囲気が個人的にも気に入っています。フィギュア化しがいのあるキャラクターですね。端整な顔立ちのキャラで、デザイン自体にメリハリがあってカッコイイ、すごく造型しやすいモチーフでした。彩色見本が上がってきたときは、社内で色んな人にその格好良さを自慢してしまいました。

松山氏:黒と白、2つのハセヲはフィギュア化にあたり、新たに高精細なCGの“ハイモデル”を作成し、フィギュア開発の皆さんにお渡ししています。色指定もサイバーコネクトツー側で指定し直している。その指定の一部は、厳密にはゲームと異なる部分もありますが、単純な色替えでなく、意味と、“面白さ”を意識して盛り込んでいます。林さんをはじめとした開発の方は、この要望に見事応えてくれました。  フィギュアはCGと決定的に違うところがあります。CGは鎧の中には何もない、データそのものがないんです。フィギュアは装備の下には肉体があり、骨がある。そしてフィギュアならではの誇張する表現もあります。CGとは異なるフィギュアとしてのリアリティを強調した商品にしていただけたと思います。“存在感”という意味で、CGとは違う表現ができました。

原田氏:『.hack//G.U.』を知らない人にもかっこいいと思ってもらえるフィギュアですよね。

【彩色見本をチェック!】

インタビューの時にチェックした彩色見本。表情に加え、アーマーや武器の細部、鎧のグラデーション、ハセヲの筋肉の描写などチェックするほどに楽しい

■ゲームの物語を補完する黒と白2つのブックレット

『.hack//G.U. Last Recode』で追加される「5thフォーム」。他のハセヲのフォームの立体化も期待したい

――本商品にはさらに“仕掛け”があるとのことですが?

松山氏:ゲームをプレイしていると、フィギュアを手にすると、もっとハセヲのことを知りたくなる。そういった人達に向けての仕掛けを用意しています。それがフィギュアそれぞれに付属しているブックレット、「黒き凶者の手記」と、「碑文所持者 調査ファイル抜粋“『重複現象』に関する考察”」です。

 ここでしか手に入らない、完全書き下ろしのアイテムです。装丁にもこだわっています。黒は小説と同じ左開き、白はレポート風に右開きです。「黒き凶者の手記」は、3rdフォームに至るハセヲの心情が吐露されている手記形式の小説です。そして、「碑文所持者 調査ファイル抜粋“『重複現象』に関する考察”」。こちらは3rdフォームに至るハセヲに隠された秘密を調査する“観察者”によるレポートとなっています。

原田氏:機密書類なのにフィギュアに同梱されています(笑)。

松山氏:買っていただくと、新たな発見が楽しめます! それぞれを見ていくと立体的にわかってくるものがあります。読むことでゲーム内のどの時期に書かれたのか、コレがどう影響したのかなど、考えると楽しい。熱心なファンほど楽しめる内容になっています。こういう仕掛けこそが、『.hack//G.U.』の真骨頂です。

――もっともっとお話を聞きたいですが、今回はここまでで。最後に松山さんに、ファンへのメッセージをお願いします。

松山氏:今回のフィギュア化は、ファンにとっても、私にとっても10年間の夢が叶った商品です。15年前、ゲームだけでなく、小説やアニメなど、お客様に様々な入り口から入ってもらおうという思いで『.hack//』は始まりました。今回、フィギュアという入り口が増えました。それは『.hack//』プロジェクトの進化であるとおもいます。そして原田さんと仕事ができて、良かったなと思いますし、フィギュア化にあたりコレクターズの皆さんと意見のキャッチボールができたのも楽しかったし勉強になったので、また色々お仕事できればなと思います

――ありがとうございました。

【黒と白2つのブックレット】

「黒き凶者の手記」

「碑文所持者 調査ファイル抜粋“『重複現象』に関する考察”」

【他のハセヲのフォーム】

「Xthフォーム」

「5thフォーム」

  ハセヲへの松山氏の想い、フィギュアへのより細かいこだわりなど、さらにディープな情報はGAME Watchのインタビュー記事で!

フィギュアーツZERO

集めやすい価格とサイズの新スタンダードフィギュアシリーズ。無可動フィギュアならではの造形・彩色にこだわり、キャラクターの魅力を再現。

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