魂の骨格 第23回 監督 村石宏實 (2)
2011-06-28 00:00 更新
『ウルトラマンガイア』には、二人のウルトラマン――ガイアとアグルが登場する。それ以前よりにせウルトラマンやイーヴィルティガといった"悪のウルトラマン"は散見されたが、アグルは単なる悪役ではない。ガイアとアグルは地球を守る目的は一緒なれど、人類の存在を巡って対立しているのだ。やがて、アグルの持つ"光"はガイアがV2、そしてSV(スプリーム・ヴァージョン)へと強化するための重要なファクターとなる!!
魂の骨格ウルトラマンガイア編の第2回は、第1話、最終回、ガイアとアグルの対決、ガイア(V2)初登場などの重要エピソードを担当した村石宏實監督に、ULTRA-ACTウルトラマンガイア(V2)の試作品をご覧になっていただきながら、当時のことを回想していただいた。
■ 地面が弾けるのはウルトラマンと地球が一緒に活動しているからです
── 村石監督はウルトラマンシリーズには昔から関わっていらっしゃいますが、第1話を監督したのは『ウルトラマンガイア』が最初ですよね。
村石 『ガイア』が初めてです。『ウルトラマンダイナ』の大阪ロケ(第35・36話)の時に、現場で制作プロデューサーから「次、よろしくお願いします」って言われたんですよ。『ガイア』への関わりは、そこからです。第1話「光をつかめ!」は特に力が入りまして、予算を使いすぎてしまいました。ちょうど同じ頃に別チームで劇場版『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』を撮影していたのですが、頭の1・2話で使った予算が映画と同じくらいだったそうです(苦笑)。もちろんムダに使っていたわけではなく、最初のうちに後で使えそうな特撮カットを撮り貯めするという事情もあったんですけどね。
── 第1話といえば、やはりガイアの登場シーンでしょうか。着地の瞬間に地面が弾ける描写は驚きました。
村石 実を言うと、地面が弾けるシーンは最初反対してたんですけどね。地球が生み出したウルトラマンが地球壊しちゃいけないよって(笑)。俺としては地球に優しいウルトラマンという方向で行きたかったけど、特技監督の佐川(和夫)さんはダイナミックな映像表現を狙っていたんです。それで、地面が弾けるのは"ウルトラマンが地球と一緒に活動しているから"と解釈をするようにしました。
── 着地シーンの撮影はどのように行われたのでしょうか。
村石 仕掛け自体は意外と簡単なんですよ。ウルトラマンの前に何箇所か土砂を飛ばす仕掛けを作ればいいだけなので。ベニヤ板の下に火薬を仕込み、マットを敷いた上に土を盛るだけなんですよ。それらの仕掛けをウルトラマンが飛び降りるアクションと合わせて破裂させるわけです。仕掛けそのものよりも、着地した時と破裂のタイミングを合わせるのが一番大変ですね。あとは火薬の量と土の量の調節かな。どちらが多すぎてもうまく行きませんから。
── もう一人のウルトラマン、アグルの演出に関してガイアとどのように差別化していたのでしょうか。
村石 アグルには"青"というイメージカラーがありましたからね。そこから夜、陰影――ガイアを太陽とすれば、アグルは月みたいな対比を連想しました。他の監督さん達もそういう風にキャラクター付けをしていたと思います。
── アグルの登場シーンはこれまでのウルトラマンにはない幻想的なイメージでしたね。
村石 アグルの登場シーンは、スーツアクターの清水(一彦)さん(※1)のアイディアなんです。影のヒーローの魅力を見事に表現してくれました。清水さんの動きにカメラやライティングを合わせていった感じですね。アグルの登場シーンに限りませんが、工夫を凝らしたシーンはのちに踏襲されるだけでなく、他の回でどんどん格好良さが増幅されていくんです。『ガイア』には映像に対するこだわりを持った演出家がたくさんいて、どんどん完成度が上がっていきました。
── ガイアとアグルが等身大で戦う話(第18話)も村石さんの監督回でしたね。
村石 『ティガ』『ダイナ』の時からなぜか等身大の回を担当しています(笑)。巨大ヒーローだと使えるセットがビルとか山に限られてきますが、等身大ヒーローはそこは自由にやれるから楽しみなんです。もちろん巨大ヒーローという設定を活かした演出もできますから。大きなアグルが出てきて等身大のガイアがギョッとするシーンなんて面白いですよね。
── シリーズ中盤以降はガイアもアグルもパワーアップしますが、ガイア(SV)は体型が差別化されていましたね。
村石 ウルトラマンは基本的にシルエットは一緒なので、ヴァージョンアップをより明確に見せるためにあえてマッチョな体型に変えました。やはりガイア(SV)は最強のウルトラマンだから体型から違うんだ、ということを見せたかったんです。ULTRA-ACTで出るとしたら体型もうまく再現してもらえると嬉しいですね。
── ULTRA-ACTウルトラマンガイア(V2)の感想をお願いします。
村石 本当によく動くのでビックリしました。ただ動くだけでなく、股関節に工夫がしてあって、腰を踏ん張った着地ポーズが取れるのが嬉しいですね。
※1 現・清水一哉。ごく一部の例外を除き、シリーズ全般に渡ってウルトラマンアグルを演じた俳優・スーツアクター。
村石宏實 (むらいし ひろちか)
1947年生まれ東京都出身
日本映画監督協会会員
円谷特技プロ光学撮影部(初代ウルトラマンなど)をかわきりに、1970年フリーの助監督に。1973年に自主映画「OH!カオ」で初監督。以降「ウルトラマンティガ」「ウルトラマンダイナ」「ウルトラマンガイア」(TV)、「ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY」(映画)等で、監督を務める。2011年公演の舞台「ウルトラマンプレミア2011」の演出を担当。5月の名古屋公演に続き、秋に東京、冬に大阪で公演予定。