魂の骨格 第17回 アニメーター 重田智
2010-12-22 00:00 更新
メカ作画監督として『GEAR戦士 電童』の数々の名場面を生み出し、その後『機動戦士ガンダムSEED』でも活躍するアニメーター、重田智氏。
氏の作品に対する想いとスーパーロボット超合金の監修で目指したものを語っていただきました。
■ 『GEAR戦士電童』への想い
──放送開始から10年経過した『GEAR戦士電童』ですが、あらためて作品を振り返って、ご自身の中ではどのような作品でしたでしょうか?
重田 フィルムを作ってるときは大変でしたが、終わってみると、なんだかすごく愛着がある作品になりましたね。自分の中では一生懸命やった作品だけにフェイバリットなんですが、本放送時のネット局数の関係や、再放送がなかったこともあって、ほとんど観る機会がなかった人が多かったはずで残念です。
ただ、観てくれた人はおもしろいって言ってくれる人が多かったんですけどね。
自分の中ではSEED(『機動戦士ガンダムSEED』)以上にがんばっていた印象なんですが、世間的には僕は「ガンダム(SEED)の人」って言われちゃう(笑)。今回のように電童という作品にスポットライトが当たってくれるのはありがたいことですよね。
──作品では総メカ作画監督を担当されてましたよね。
重田 この間、同業者と話していて気付いたんですが、ここまでじっくりとロボットアニメに参加したのは、実はこの作品が初めてだったことに気が付いたんですよ。
このジャンルが好きですから、ロボットアニメに原画マンとして参加することは、結構あったんですね。でも、自分がメインとなって仕事をするのは初体験だったので、作品のオン・エアに追いかけられつつ右往左往しながらやってました。
ただ、作品世界の物語にどっぷり浸かれたかというと、ちょっと難しいかったですね。スタジオの中では毎日BANK(バンク)シーンを描いていましたが、実はこの作業が忙しくて、当時は本編の話の内容を知らないくらいでした。
横を見ると他のスタッフが各話の作業をして面白そうだなぁってうらやましかったという(笑)。
──当時の思い出はいかがですか?
重田 やはり発進シーンやデータウェポンの呼び出し召喚、武器の使用とか、いわゆるBANKシーン(必殺技など繰り返し使うシーン)を来る日も来る日も、最初から最後までずっと描いていたイメージですよね。
終わってみたらBANKシーンの絵コンテを集めると、テレビシリーズの一話分のコンテの、一冊半くらいの分量あるよなぁって。
それだけに個人的なアニメーターとしての作業量や満足度では、SEED以上だったかもしれません。もちろん、このときに福田さんと一緒に培ったものは、SEED以降に活かされていたりするので、あるべくしてあった作品ですかもしれませんね。
■ スーパーロボット超合金 電童&凰牙
──電童が「スーパーロボット超合金」で商品化決定すると聞いて、いかがでしたか?
重田 (TV放送から)10年後に出たことはまったく奇跡的ですよね。実際、スーパーロボット超合金になると聞いたとき、よかったなとは思ったんですが最初の試作を見たら、良くも悪くも設定通りにできていると思った反面、「あれ? こんなだったかな」とかも思ったんですよ。
後で自分の描いた設定を見たら、これがそっくりだったんですけどね(笑)。やはりどうしても作画をしていく段階でプロポーションは見栄えするものに変わっていって描いてしまうんですよ。
──今回、どのような経緯で監修を手掛けることになったんですか?
重田 実は最初からバンダイさんのオファーが来たわけではないんです。過去に何回か(バンダイ商品の)監修をさせてもらった特権行使みたいなこともあって、何とかなならないかなとわがままを言ってお願いしました。やっぱり、放送当時のTV画面イメージでの形で商品化にならないかな、と。
自分で手元に置いて、恥ずかしくないものを出してほしいし、作りたいなって思ったんです。(ステキな商品が欲しいのは)ファンも同じでしょうからね。
──電童の立体設定はご自身から自発的に描かれたそうですね。
重田 この図面通りしてくれということではなくて、ビジュアル的な資料はないより、あった方がればいいのかなと思ったんです。それと後で描いておけばよかったと思うのもイヤだったので、とにかく描くだけ描いてしまおうと。
一方で本当は描かないほうがいいのかなとも思ったんです。アニメーターの絵をそのまま立体化したら、まとまりのないものになってしまう可能性もあると考えていたので。
ただ、(立体監修に関わるようになって)最初の頃は絵を描かずに打ち合わせだけで進めて立体が完成していたんですが、想いの丈から考えると一体何割くらい拾ってもらえたんだろうというところがあったんです。やはり設定画や試作品を前にもう少し胸部を大きめに、など数字ではない部分をどう解釈するかは言葉だけでは共通認識しづらいじゃないですか。
だから結局はある程度の参考画稿があったほうが意識はあまりずれないのではないのかなと。ただ、絶対にこうしてくれという事ではないんですが。
──現在はまだ試作サンプルですが、スーパーロボット超合金となった電童・凰牙を見ていかがですか?
重田 当時、小学生だったら(価格的に)買えないと思いますけど、あの頃にあれば欲しかったと思ってくれるファンの人が10年という年を重ねた今、喜んで買ってもらえばいいかなぁと思いますね。もちろん自分も商品として欲しかった、みたいなところもあるんですけど(笑)。
超合金は頑丈さもあって自由度が大きいので、TVのアクションポーズだけでなく、自分なりに突拍子もない格闘ポーズや技を考えて遊んでくれるといいですね。
こういった商品をいじるのってたぶん"なりきりごっこ"だと思うんですけど、色々といじり倒してって欲しいです。
──エフェクトパーツについてはいかがですか?
重田 バンダイさんの色々なアイテムに付属しているのを見るたびにすごいなぁって思うんだけど、気流とかビームとか手でに掴めないものを立体にするのは難しくないのか(笑)。
アニメで描くときに、立体では作れないだろうって思って描いたりするわけですよ。それをやってくるんだからチャレンジ精神がありますよね(笑)。
──電童のとき、"火花"のエフェクトを描いたのには理由があったんですか?
重田 電童が武器を持っていないところから仕方なく生まれたところもあるんですよ。素手で戦う拳法アクションが主体となったとき、本体のアクションはもちろん、やられる側のリアクションとそれに付随するエフェクトをどうするか考えたんです。
ただ、手足のタイヤというか、タービンが回転するだけはなかなかそれらしく見えなくて、それを視覚的に描くとき、気流と火花になったんです。
今回、ファンの人が電童のスーパーロボット超合金には「火花のエフェクトが欲しい」と言ってましたが、それは(立体では)どういうエフェクトパーツになるんだって(笑)。
──現在の試作について、その他、何かありますか?
重田 最初の試作のときにあった輝刃はどうなっちゃたんだろうって(笑)。 キバストライカーに変形してほしいとかではないんですけど……でも、(ファンは)やっぱり自分で変形させて、動かしてみたいんですかね。
可変モノの難しさは、(可変前と可変後の)どちらのスタイルも損なわないようにすることですよね。やっぱり難しいかもしれません。
やはり他のデータウェポンなり、フェニックスエールなり、みんな欲しいんだろうとは思うんですけれど、他のメカが続けて立体化されるのかどうか……。
自分としても輝刃やアニマル形態のデータウェポン、アカツキの大太刀、凰牙の剣、セルファイターやセルブースターなどもぜひ欲しいんですけれどね。
自分でマイナスな言い方をしてはいけないと思うんですが、ロボットは電童と凰牙の2体しかいないので(笑)。すべてはお客さん次第なんでしょうね(笑)。
重田 智 (しげた さとし)
アニメーター。『新世紀GPX サイバーフォーミュラ』OVAシリーズのメカニカル作画監督を担当する等、数々のメカアニメ作品に参加。『GEAR戦士 電童』では総メカニカル作画監督として、出撃シーンや必殺技シーンを重点的に担当。『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』ではチーフメカ作画監督として本編全般に携わる。
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