魂の骨格 第16回 歌手 和田光司
2010-11-19 00:00 更新
第1作『デジモンアドベンチャー』から、2010年最新作『デジモンクロスウォーズ』まで、デジモンソングを歌い続けるアーティスト和田光司さんに、デジモンへの想いを語っていただきました。
■ デジモンでメジャーデビュー。
──アニメ主題歌のお話を聞いたときの印象は、いかがでした?
和田 想像していなかった世界でしたね。そのときに初めて「デジモン」という言葉も聞きました。僕の中では未知数だったんですよね。そのときは携帯ゲームもありましたけど、まだ初期段階。ほぼゼロの状態からアニメになることに、非常に興味を持ちました。
──和田さんにとって、「Butter-Fly(※『デジモンアドベンチャー』オープニングテーマ曲)」は新しいジャンルだったとお聞きしましたが?
和田 いまだったら受ける印象は逆なんでしょうけど、当時は新しかったですね。アップテンポの曲は初めてで、「オレってこう歌うんだ!?」って発見もありました。あのころ僕は、スローテンポの曲しか歌ってこなかったというか、そういう曲が好きだったんです。初めてデモテープ・・・当時はカセットテープ(笑)だったんですが、それを聴いて、こんなに早いテンポの曲歌えるのか?って、そんな第一印象でした。
でも僕を選んでくれたディレクターさんは、声質を含めたそのギャップが(人々を)惹きつけると考えてくれたんです。この曲にぴったり合うアーティストはきっと他にいる。でも合い過ぎると、いいねって思っても、通り過ぎてしまう、そんなつまらない曲になってしまう。そうディレクターさんは言ってくれました。
ギャップのある歌手を探すタイミングに、ちょうど僕がプロダクションにデモテープを送ってきた。『デジモンアドベンチャー』という作品があって、歌があって、歌い手があって。その全てが偶然に一箇所に集まった。「奇跡」ですね。だから僕はデジモンに出会えてラッキーです。人生を左右する出来事でした。放送開始から11年、いまだに関われているのは幸せですね。
──「Butter-Fly」に画がついたときのご感想はいかがでした?
和田 なによりも、びっくりしました。まずデモテープに入っている曲に、歌詞が出来てアレンジも固まって。それに映像が加わって、歌と曲と詩とが一つに重なったときの衝撃は、忘れられないですね。1ファンとして、第1話は自宅で正座して見させていただきました。本当に、ありがとうございました。
■ 『デジモンアドベンチャー』の想い出。
──『デジモンアドベンチャー』自体の印象は?
和田 大好きです!ずっと見ていました。僕はエンジェモンが好きだったんですよね。なかなか進化しないのが、たまらなくモヤモヤしてました。「なんで僕だけが進化できないの!」って、そこで初めて進化できたときの感動ったらなかったです。やっと俺のエンジェモンが出てきた!(笑)って。本当に、随所で感動させられた作品でした。最終回には僕も泣きましたよ。
──ラスト「Butter-Fly」のアカペラが泣かせるんですよね。
和田 あれは、あのシーンのために作ったわけじゃないんです。たまたまレコーディングのときに、こういうのも作っておこうよってストックしていたんです。ああ使うとは、僕も知りませんでした。ラストに相応しい使われ方でしたね。
──和田さんから見た、デジモンの魅力とは?
和田 現実世界とデジタルワールド、2つの世界を作り上げたことですね。2つの世界をリンクさせたことによって、よりリアル感が生まれる。実在の地名が出て来る現実世界があるから、デジタルワールドも視聴者的にリアルに感じられたんじゃないでしょうか。だからストーリーのなかに自分を入れやすい。
それこそお台場って文字を見るだけで、デジモンを連想できるじゃないですか。そういう「場」を提供したデジモンって、すごいなって思うんです。いまも8月1日はお台場に人が集まるんですよね。記念日にファンの人たちが全国から集う。作品の力を痛感します。
■ D-Artsとの、夢の対面。
──D-Artsウォーグレイモンの感想をお聞かせ下さい。
和田 フィギュアに触ったのが、正直久しぶりなんですよ。近代化という感じです。僕から見たら、もう最新ハイテク機器ですよ。とても忠実に再現されている。夢の結晶がここにある感じです。自分の好きなポーズで飾って、独り占め出来ちゃう贅沢ですね。
遊び方は色々でしょうけど、ここまで素晴らしいとガラスケースに飾りたくなります。背景に文字を走らせて、「Brave heart」を流したい(笑)。そんな気分ですね。
──D-Artsオメガモンの感想もお聞かせ下さい。
和田 オメガモン楽しみです。あの映画(※劇場版「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」)を見たときから、根強いファンですから。細身なのに重量感がある、キャラクターのインパクトも素晴らしかったですね。D-Artsは細い腰も忠実に再現されていて、映画からそっくりそのまま出てきましたって感じ。これはファンの方は嬉しいんじゃないですかね。ウォーグレイモンと一緒に、欲しくなります。
■ 和田さんにとってのベストは・・・。
──デジモンソングを歌い続けて、印象に残った出来事はありますか?
和田 「人生で夢を諦めかけたとき、歌を聴いてもう一度やろうと思いました」とか、メールをもらうことがあります。とても光栄ですね。あとは南米に行ったとき、デジモンの人気に驚かされました。みんな歌を日本語で覚えてくれてるんですよ。大合唱するんです。それが衝撃的でしたね。地球の真裏にも、デジモンの人気が到達しているんだと思いました。
──難しい質問だとは思いますが、一番お気に入りの曲はどれでしょう?
和田 よく聞かれるんですよ。でも作品ごとにコンセプトがあって、それを僕らは忠実に、最大限そこに向かって仕上げています。だから何がベストとは、一概に言えないんですよ。・・・でも何かと聞かれたら「Butter-Fly」です。って、言ってるじゃないか(笑)。やっぱり、デビュー曲は大きいんですよ。それだけ思い入れも違うんです。デモテープで最初に聞いたときの衝撃。初めてアニメを制作する側に立ったのも初めてだし。だからどうしても印象深いのは、「Butter-Fly」ですね。
──主題歌と挿入歌では、歌い方に違いはあるのでしょうか?
和田 少なからずアプローチが変わってきますね。今回の『デジモンクロスウォーズ』だと挿入歌を、以前だったら主題歌を、高揚感溢れる歌にしたいと思っているんです。歌のチームで番組を盛り上げていく。主題歌だと、「さあスタートするぞ!」っていう高揚感。挿入歌だと、戦いをさらに盛り上げていく高揚感。どうアプローチするのか、それがテーマになってきます。
──歌い続けることで、新しい発見もあるのでは?
和田 それはもちろんそうですね。デジモンが進化するように、誰だって進化しなきゃいけない。同じアプローチじゃダメだと思うんです。作品ごとに突きつけられる命題は違うし、僕ら歌い手も、進化していくからそれを超えていける。「Butter-Fly」があったから「ターゲット(※『デジモンアドベンチャー02』オープニングテーマ曲)」がある。「ターゲット」があるから「BIGGEST DREAMER(※『デジモンテイマーズ』オープニングテーマ曲)」がある。そうやって、進化してこれたんだなとつくづく思いますね。
■ デジモンは人生。
──和田さんにとって、デジモンとは?
和田 生活の一部分。僕にとっては人生の「道しるべ」ですね。何を語ろうが、何を歌にしようが、デジモンは外せないんですね。セットになっちゃってる。考え方や方向性、その全てを作品から教えられた感じです。自分自身より「進化」していきたいと自然に思わせてくれる作品で、僕らも純粋に取り組んでこれた。もっともっと歌のチームとしてデジモンをきっかけに、日本や世界まで盛り上げて行きたい。それが僕らの使命だと思ってます。
──ライフワーク的な作品に出会えたことは、歌手冥利に尽きるのでは?
和田 そりゃもう、幸せですよ。ラッキーなんでしょうね。全てのラッキーを、この作品と出会えた事で使い果たしたのかもしれない(笑)。僕にとっては、それほど大きなことなんです。今日ここで、こうして取材を受けているのも、あのときの出会いがあったからこそ。デジモンは人生そのものです!
和田 光司 (わだ こうじ)
1974年1月29日生まれ / 京都府出身
1999年『デジモンアドベンチャー』オープニングテーマ曲「Butter-Fly」でメジャーデビュー。以後、『デジモンアドベンチャー02』、『デジモンテイマーズ』、『デジモンフロンティア』、『デジモンセイバーズ』と、最新作『デジモンクロスウォーズ』に至る全シリーズに参加する。
現在、声優の前田愛とのユニット、KALEIDO☆SCOPEとしても活動中。
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